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生産性を向上させるEAP対策とは

生産性を向上させるEAP対策とは

平成26年度 厚生労働省 「ストレスチェック制度に関するマニュアル作成委員会」委員
平成26年度 厚生労働省 「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取扱い等に関する検討会」委員
プール学院大学 教育学部 教授/労働衛生コンサルタント/日本医師会認定産業医
岡田邦夫先生

Qストレスチェック制度を導入する企業として、意識しなければいけないことはどんなことでしょうか。

ストレスチェック制度は本来、メンタルヘルス不調者や自殺の増加に対する方策を決定する中で生まれ出たもので、メンタルヘルスケアにおける一次予防に相当するものです。腎不全による透析を予防するためのメタボリックシンドローム対策(特定健康診査・特定保健指導)と同様に、心の病に陥っていない状況であっても、リスクがある場合は対応を講じて、疾病化を未然に防ぐことに意義があります。
従業員が疾病で休職することは、労働生産性が低下し、同僚に負担が配分されることになります。また、管理職の仕事量が増えることになるでしょう。つまり、企業にとってはメンタルヘルス不調に陥ってからの対応よりは、元気な従業員がより元気になるような対策を講じるほうが効果的であるといえます。
ストレスチェックは、一次予防とはいえ心の問題でもあります。プライバシーに対する十分な配慮が必要です。この点において、今回のストレスチェック制度では、その結果を事業者に報告するかどうか、については、従業員の同意を必要としています。
さて、ストレスの感じ方は人によって大きく異なります。このことが、職場でのストレス関連疾患やメンタルヘルス不調の対策を検討する時には重要な因子となります。企業からみると、この程度のことでメンタルヘルスの問題が発生するのか、といったこともあるかもしれません。しかしそれは、個々の従業員の感受性の幅が、従来に比べて飛躍的に大きくなっているからかもしれません。
ストレスは個人の受け止め方なので、平均的な考え方はあてはまらないのです。管理職が「なぜこれがストレスになるのか」と感じることでも、本人にとっては重大な問題であることがあります。ほかの人が些細なことと捉えても、本人には極めて大きなストレス、という場合もあることを理解し、ストレスチェック制度を実施することが重要です。
ストレスチェックは今回、法律で制度として定められました。しかし、事業者の推進力のもと、産業保健の専門家の意見を参考に、現場の管理監督者が部下のストレスケアをするというのが本来の姿だろうと思います。それによって、心の健康問題の多くが予防できるようになるのではないでしょうか。

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Qストレスチェックを含む、企業としての総合的な対策はどのようなものとお考えでしょうか。

岡田 邦夫 先生

働く人のメンタルヘルス不調は、増加の一途をたどっています。技術革新によって職場のIT化が急速に進展し、現在ではほぼすべての人が、パソコンを使って仕事をするようになりました。また、片手で携帯電話やスマートフォンを持って、画面を見ながら仕事をしている場面もよく見ます。莫大な情報量の中で仕事をしているのですから、時に疲れを感じることがあるでしょう。つまり、強制的な緊張感の持続が、心身の不調を招くことになるのです。
土・日の休日はなぜあるのでしょうか。月曜から金曜日までの緊張をほぐすためにあるはずです。しかし最近では、その土日さえ、そして就業時間後や深夜にも働く人は少なくなく、緊張感にさらされ続ける生活を日々送っています。そこでは、緊張感がほぐれる時間や、同僚、上司、そして家族とのコミュニケーションの時間は限りなく少なくなり、コンピュータが最も長時間のコミュニケーション相手となっているようです。
将来を見据えた企業が、優秀な人材が心身の不調に陥るのをただ見ているだけでよいのでしょうか。将来を担う若き従業員の心と体は、大きな価値を持った資産でもあり、大切にしなければならないものです。フィラデルフィア宣言にもあるように「労働は、商品ではない」のです。人が生み出す生産性と創造性は、人ならではの価値ある財産でもあります。それは、機械ではなく、心を持った人のみが創造しうるものだろうと思います。
企業の多くは「自然や地球にやさしい」と謳っていますが、その自然と地球に付随している「人」もまた、大切にしなければなりません。従業員の心身の健康に対する総合的な対策は、経営者や管理監督者が、個性をもった一人ひとりのことを個別的に考えるべきでしょう。物の見方や考え方、健康状態やストレスへの対応の仕方、職務適性などを考え、人を大切にすることが基盤となります。職場で困った時には、家族に心配をかけることなく、自発的に自分の問題を職場で解決できるような快適な環境を醸成することが企業には求められていると思います。

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Qなぜ、そのような対策が必要なのでしょうか。

岡田 邦夫 先生

働く人は、自分自身で今悩んでいることが、果たして相談すべきことなのか迷っていることがあります。「こんなことを相談してもいいのだろうか」、相談しても仕方がないかもしれない「いや、相談することで自分の立場が危うくならないか」などの不安や心配がストレスとなり、悶々とした日々を送って、いつしか体に変調をきたし、睡眠がとれなくなるのだろうと思います。
しかし、その問題は上司に相談すれば、あっという間に解決する可能性があるかもしれません。上司に話を聞いてもらうだけで気持ちが落ち着く種類のものかもしれません。いつでも悩み事の情報交換ができる状況ができていれば、多くの人とコミュニケーションをとることによって不安感を解消できるかもしれません。人と人の間に張り巡らされたコミュニケーションの糸は、絡み合っているほど、人は強くなれるのかもしれません。しかし、現代社会においては、その糸が最初から絡み合っていなかったり、あるいは絡み合った糸を自らまたは周囲から切断される、という事態も起こりえます。
職場外からの糸、つまりは家族や専門家などの支援もまた必要な時代となっています。多くの支援が、人の成長を支え、悩みを乗り越えさせ、それによって得た力は、後輩に与えることができるようになります。誰に助けてもらったのかわからないけれど克服できたのは、それだけ緻密な人のネットワークが張り巡らされていたからでしょう。仕事も同じですし、自分自身の健康も同じでしょう。職場の力、企業の力が人を成長させ、同時に企業を成長させているのです。経営者の未来を俯瞰した経営戦略が必要な所以です。

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Q岡田先生が考える「生産性を向上させるEAP対策」とはどのようなものでしょうか。

EAPの本来の姿は、「企業では解決できない従業員の個別の問題を、職場の誰にも知られることなく解決すること」です。従業員にとって、薬物や飲酒、家族の問題などは、職場では知られたくない問題です。一方で、これらの問題は企業側からみると、生産性の低下に直結するものであり、さらには、企業イメージを損なうものになりかねません。従業員も苦しみ、企業も苦しむことになります。
ストレスチェックで従業員の評価結果が「高ストレス」と判定された場合、すべてが職場内のストレスからくるものとは限らないでしょう。しかし、家庭の問題やプライベート問題に会社は介入すべきではないと放置してしまえば、その従業員の生産性は低下し、休職に至る可能性も否定できません。つまり、企業は従業員の健康と企業の経営の視点からEAPについて考える必要があるのです。
社内EAPと社外EAPは、まさしく経営者が企業の経営と従業員の健康を両立させるための投資として位置づけられるものではないでしょうか。実際に、健康投資に積極的な企業は、図1のような結果が出ています。さらに、EAPは、企業の業種・業態、風土等を理解し、従業員の健康管理体制を把握するという点で、企業と従業員の両者を支援するものとして期待されます。

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岡田邦夫先生 略歴

  • 大阪市立大学大学院医学研究科卒業
  • 大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任
  • 平成26年よりプール学院大学教育学部教育学科 健康・スポーツ科学センター長 教授
  • 平成22年度厚生労働省、平成24年度文部科学省のメンタルヘルス関係の委員を歴任
  • 特定非営利活動法人健康経営研究会理事長
  • 平成26年度厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員
  • 平成26年度厚生労働省「ストレスチェック制度に関するマニュアル作成委員会」委員

参考

  • 健康投資に積極的な国内企業のインデックス比較(TOPIXとの比較)とTEAMS導入企業の株価推移
健康投資に積極的な国内企業のインデックス比較(TOPIXとの比較)とTEAMS導入企業の株価推移

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