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コラム

TEAMSのEAPコンサルタントがお届けするコラムです

守らなくても良い法律って?(vol.94)

2017.11.17

 最近東アジア情勢が話題になっています。 その中で "日本は先進国として・・・" とか "日本は法治国家ですから・・・" とニュースでコメンテーターが解説しているのを見て、ふと思うことがありました。
今回は労働法を取りまくテーマです。

日本は法治国家ですよね...

 二ュースのコメンテーターがよく「日本は法治国家ですから......」と発言しているのを聞きます。ご存知の通り法治国家とは、人(権力者)が支配する国家ではなく、法体系によって国家の決定が行われることです。コメンテーターは「日本は近代国家である。」と言いたいのでしょう。


 今から約15年前、産業保健推進センター(現在の産業保健総合支援センター)でカウンセリングを担当していた時の話です。そこの副所長さん(労働局出身)とのなにげない会話がきっかけでした。

副所長:「日本で守らなくて良い法律ってありますか?」

私:  「そんなのないでしょう。分かっていて守らない場合(違法行為)のことですか?」

副所長:「いや、そうではなくて、守ろうという認識がほとんどない法律のことですよ」

 さらに、話を続けて、「それは労働法関係の法律ですよ...」と。当時、労働法という名前ぐらいは知ってしましたが、具体的な内容まで知りませんでしたので、私は大変驚きました。日本は法治国家ではなかったのでしょうか?

それって罰則はあるのですか?

 現在、EAPコンサルタントとして企業の人事部門の担当者とお話をする機会があります。その中で、ストレスチェックや定期健康診断等の労働法の話題で、「それって罰則はあるのですか?」と聞かれる場合が少なくありません。「できれば取り組みたくない...。やらなくたって罰は受けないのだから...」という心の声が聞こえそうです。私は15年前の副所長の話を思いだしました。「守ろうという認識がほとんどない法律...」とは、まさにこのことでした。

 コンサルタントになった当初は、このような質問には「そうですよね。なかなかむずかしいですね」などと答えていました。振り返ってみると、とんでもないコンサルタントです。今なら「直接罰則がない法律だと、経営の方も優先順位が下がってしまうということですね。でも民事訴訟になった場合、"企業に過失あり" とされるリスクは高いですよ。それに、コンプライアンスへの取組みからみていかがでしょう? それらの点も考えていただいて経営判断をお願いいたします。」と言うに違いありません。


 ここで、突然ですがクイズです。○か×でお答え下さい。

問1:36協定が結ばれていない職場で、従業員が週60時間の労働をおこなった場合、その従業員は労働基準法違反に問われる。

答え:×

理由:労働基準法違反に問われるのは使用者です。ちなみに6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

 

問2:労働基準法で定めている労働条件は、目指すべき目標基準である。

答え:×

理由:最低基準の労働条件です。下回ることは許されません。

 

問3:労働安全衛生法の目的は「労働者の安全と健康の確保」であり、「快適な職場環境の形成の促進」ではない。

答え:×

理由:「労働者の安全と健康の確保」と「快適な職場環境の形成の促進」の両方です。

 

問4:労働基準法監督官には逮捕権限がある。

答え:

理由:労働基準監督官には、刑事訴訟法上の司法警察員の権限があります。ニュースでも「労働基準監督署がブラック企業の代表を逮捕・送検した」などと話題になりましたね。

 

 みなさま、どうでしたか? 少々簡単すぎたかもしれません。

労働法は誰のため?

 すでにご存知とは思いますが、労働法は「労働者の権利」を守るためにつくられました。生命、安全、健康など、「人に値する生活を営むため」に必要不可決な権利です。労働法のクイズにもありましたが、悪質な場合は事業主が逮捕・送検される強力な法律です。では、なぜ「守ろうとする認識がほとんどない法律」になっていたのでしょうか?


 産業保健推進センターの副所長さんとの話の続きです。

私:  「労働法があるのは知っていましたが、内容までは知りませんでした。でも労働基準監督官に司法警察権があるなら、労働法違反の企業を送検すれば良いのではないですか?」

副所長:「労働基準監督官には逮捕権がありますが、企業や経営者の数に比べて絶対数が少ないので手が回りません(企業数:428万社、労働基準監督官:3241人、2016年現在)。それに、まずは行政指導から実施します。労働基準監督署は常に人手が足りない状態ですよ」

法律は守らなければ意味がない

 あと少し話はつづきます。

副所長:「でもね、これからは変わりますよ(約15年前の話です)。守らなくても良い法律なんて、法律の意味がありません。今後は労働基準局も法令順守の方向へ舵を切っていきますよ...。」


 今思い返しますと、副所長の言う通りに変わってきていると感じます。2017年5月10日、厚生労働省労働基準局監督課は労働基準関係法令違反の企業名334件を公表。さらに、10月16日に537件を公表しています。当たり前ですが、労働基準局はますます法令順守の方向を打ち出すでしょう。

 みなさまはこのコラムを読んで、何をお考えになりましたか? 「担当として作業が多くなりそうだ。面倒くさい...」 「管理職に再研修が必要だ。現場はほとんど労働法を気にしていない、研修計画が面倒になりそうだ...」 などと思ってはいけません。もしそのような考えが頭に浮かびそうになったら、次の言葉を思い出してください。

「労働法は、働くひとの命、健康、生活を守る法律だ」

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